ブログDIRECTOR'S BLOG

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来年4月に分院が開院します

ブログの更新がすっかりご無沙汰していました😔4、5月は色々と準備や打ち合わせで忙殺されていました。

というのも、来年4月に当院から歩いて3分の札幌市北区北37条西3丁目の地に、心臓リハビリテーションを専門とした分院、『あさぶ心リハクリニック』を開院する準備を進めています!

リハビリテーションというと、整形外科疾患や脳梗塞後などのリハビリテーションを思い浮かべる方が多いと思いますが、実は狭心症や心不全などの心臓病や血管疾患(下肢閉塞性動脈硬化症、大動脈瘤)、心臓手術後の患者さんは第二の心臓である骨格筋(筋肉)を鍛えることで、死亡率が低下するだけでなく(下図上)、狭心症症状の改善、運動能力の向上、下肢の血流改善、さらにはうつ状態の軽快、生活の質改善、炎症を抑える効果、自律神経への有効性、など非常に多面的な有効性があることが証明されています(下図下)。

Belardinelli R, Circulation 99: 1173-1182, 1999.

 

 

ただ、心臓病などの循環器疾患の患者さんが行う心臓リハビリテーション(以下、心リハ)は、他のリハビリテーションと決定的に異なる点があります。

それは、心臓の働きが低下しているが故に、心臓に過剰な運動負荷をかけると逆に病気を悪くしてしまう側面があるということです。つまり、あらかじめ心肺運動負荷検査(下図参照)という特殊な検査によってどこまで運動して良いか負荷量の閾値を計測し、そのデータの基づいて心リハに精通した医師および理学療法士の監視の下、実施することが原則必要になります。ここまで運動しても良いという閾値のことを嫌気性代謝閾値(AT)を呼び、AT以下であれば有酸素運動を行うことになり、安全に心リハを実施できますが、AT以上の負荷になると無酸素運動を行うことになり、心拍数や血圧が急激に上昇し、交感神経が活性化されて不整脈などの心事故が起こりやすくなります。ATは負荷量(ワット)、運動強度(METs)、心拍数、その時の自覚症状 (Borgスケール)で表すことができ、この結果を基に心リハのトレーニングメニューを作成します。下の図でいうと、AT時の負荷量は66ワット、運動強度は2.46METs、心拍数は99 分/回になりますので、自転車の負荷量を最大で66ワット、心拍数は99回/分以下になるように運動を行って頂き、日常生活ではゆっくり歩く(2METs)から早足で歩く(3METs)の中間くらいでウォーキングすることを指導します。

 

 

このように、特殊な検査機器だけでなく専門的知識やマンパワーを要する心リハであるが故に、通常は入院中に実施されることがほとんどでした。しかし、昨今の社会医療費の逼迫から入院中に十分な心リハを行うだけの入院期間を確保することが難しく、入院中は心リハの導入だけ行い、外来で継続することが求めれています。しかしながら、退院後に外来で行う『維持期心リハ』の実施率は実際に日本全体で10%に満たず、さらにコロナ禍によってほとんどの医療施設が外来心リハの中止を余儀なくされました(下図上)。その結果、心臓病を有する患者さんは退院後も自宅に引きこもりがちとなり、運動不足によって筋量の減少や運動能力が低下し、その中で肥満を合併したり逆に食欲がなくなったりして、結果的にちょっと動いただけで息切れがしやすくなるといった、心臓病の重症化が顕著になりました(下図下)。

COVID-19に関する心臓リハビリテーションの現状調査 日本心臓リハビリテーション学会 ホームページより抜粋

 

今は緊急事態宣言が解除され、多くの人が感染予防に努めながら社会活動を再開していますが、特に高齢者や基礎疾患をもっている患者さんは未だに自宅に引きこもっている方が多く、何より一度失われた運動習慣を自分の意思だけで取り戻すのは非常に困難です。また、医療機関側においても、入院施設がある限りどんなに入院前PCRの全例実施などの水際対策を行ったとしても、ウイルスの持ち込みを完全に予防することは困難であり、リハビリテーションの実施は今後どうしても限定的になるでしょう。そうした情勢を考えると、コロナ禍である今こそ、外来に特化した心臓リハビリテーション施設が必要ではないかと考えました。


私、院長は心リハ指導士という心リハの実施に必要な資格を有しており、日本心臓リハビリテーション学会の評議員を拝命しています(日本心臓リハビリテーション学会ホームページ)。来年4月には新たに心リハに精通したスタッフ3名が加わり、道内ではおそらく初めてとなる外来に特化した心臓リハビリテーション施設を開院する予定です(完成予想図)。院内には運動施設だけでなく歯科や栄養相談室が完備され、これまで行ってきた薬物治療だけでなく、運動療法、口腔ケア、食事療法、心不全療養士による療養指導を軸とした心臓病患者のトータルケアを目指して参ります。

今後は随時、分院に関する新着情報を更新していきますので、どうか期待していてください。