こんにちは。院長の福島です。
せっかく、行動制限が解除になったのに新型コロナの第7波と思われる感染が首都圏を中心に急速に拡大しています。
皆さんも同じだと思いますが、医療者の立場からも「コロナはもう、うんざり」です。思い返せば、4年前の4月に当院は開院し1年足らずでコロナ禍となり2020年の2月頃から発熱外来を始めてかれこれ2年半が経過しようとしています。最初は『得体のしれない未知のウイルス』『致死率が高い』『空気感染する』など、正体不明の新興感染症を皆が恐れ、確立した治療法も予防法もありませんでした。医療機関はどこもN95マスク、防具服や手袋は底をつき、通常のサージカルマスクですら十分に手に入らなかった中で、それでも自分達が発熱外来という門戸を開けて立ち向かわなければ、患者さんの不安は拭えない!! と使命感だけで始めました。
いくら院長がそう思っても、患者さんの症状を最初に聞いて発熱外来に案内するかどうか判断しなければならない医療事務、飛沫を浴びるという最も高いリスクを背負いながら検体採取する看護師・検査技師、全員の協力がなければ発熱外来は成り立ちません。それを快く受け入れてくれたスタッフに本当に感謝しかありません。
実際に、今でもスタッフの協力が得られない、ビル診などで施設の許可が降りない、そもそも院長が消極的などの理由で発熱外来をやっていない医療機関はたくさんあります。『発熱患者はお断り』そういうポスターを張っている診療所も見受けられました。けど気持ちは分かるのです。自分達も決して好きでやっているわけではありません。発熱外来を始めた当初は『ここで発熱外来をやっているんだね、感染するのがこわいから近寄らないようにしよう』とか、『発熱で待機している患者が邪魔だからやめろ』とか、いわれのない誹謗中傷や嫌がらせを受けたこともありました。しばらくして、国や自治体からは『発熱外来をやってる施設はホームページで公表せよ』といった通達が来ましたが、こちらはやっていますと言いたくても、前述した誹謗中傷や、逆に公表した発熱外来へ患者さんが集中してしまうため、怖くて公表できなかったのです😔
そんな中でも、当院スタッフは月~土の週6日 12:00~13:00の1時間、お昼の休憩時間を割いて、発熱患者さんの対応に当たってきました。しかし、第2波、第3波と一度感染が収束してはまた再燃し、それに加えて複数回のコロナワクチンの接種で土日はつぶれ、コロナ禍でも通常診療は休みなく続き、いつ収束するのか全く先行きが見えず、お昼の休憩時間は30分とれるかどうかが続くと1人辞め、また1人辞めと離職者が増えていきました😔
それがちょうど昨年の冬頃でした。私も心身ともに疲れ果て、いつしか人を思いやる余裕や優しさが減っていたかもしれません。そんな時に限って、Googleの口コミで心無いことを書いてくる人が出てくるのです。自分達は一生懸命、身を削って頑張っていてもそれが報われない口惜しさ、やり切れなさを経験しました。
発熱外来をやっている医療機関へ『安心センターから紹介されたのに診てくれなかった』『検査だけして診察がなかった』『薬が効かなかった』などとコメントされる皆さん。札幌市の発熱外来ってどういう仕組みで機能していて、どんな検査や診断までのプロセスがあるかご存知でしょうか?
【発熱外来の検索から受診、診察までのプロセス】
①発熱や急な症状があったら、まず札幌市ホームページの『発熱者等の外来診療・検査を実施している医療機関一覧・発熱外来マップ』にアクセスして下さい。https://www.city.sapporo.jp/hokenjo/f4imuyaku/f78anzenshien/hatsunetsugairai.html
②そこに『発熱外来マップ』がありますので、クリックすると近所で発熱外来を実施している医療機関が検索できます。ただ注意点があります。マップに掲載されている医療機関は『かかりつけ患者だけ受け入れる』施設と、『かかりつけ患者以外も受け入れてくれる』施設に分かれています。当院は後者ですが、かかりつけ患者さんを優先して受け入れています。また、このマップはリアルタイムで更新されており、予約が一杯で受け入れ不可の場合は表示が消えます。
③マップから受診可能な医療機関を決めたら、必ず受診前に医療機関へ事前連絡をしなければいけません! ここがとても重要です。だいたいどこの発熱外来も他の患者さんとの診察時間を分けるため、1日で検査可能な人数を制限しています。予約が必要な場合が多いので、必ず受診前に電話やネットで問い合わせて下さい
④もし、ここで事前連絡し受け入れが不可となり、他に受診可能な医療機関が見つからなかった場合は救急安心センターさっぽろ:短縮ダイヤル #7119 または011-272-7119へ問い合わせれば受診可能な医療機関を紹介してくれます
⑤発熱外来から指定された時間、場所に到着し受付したら、医師が必要と判断した患者さんへは新型コロナの検査が行われます。検査には大きく分けて抗原検査とPCR検査があります。
⑥抗原検査は15分程度で結果がすぐに分かります。PCR検査は数時間から1日程度結果まで時間がかかります。以前は抗原検査の偽陰性(本当は陰性じゃないのに陰性と検査で出る)ばかり報道されていましたが、今になって抗原検査の正確性が高く、PCRの代替になることが分かっています。ただし、発熱や咽頭通などの症状が出現して24時間経過していない、発症したばかりの場合は抗原検査では誤って陰性に出ることがありますので、その場合はPCR検査が推奨されます。
⑦抗原検査かPCR検査で陽性と出れば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断が確定します。当院では陽性者はそのまま電話診察に切り替えます。陰性の場合はCOVID-19が否定されたことになりますので、院内で必要な検査(血液検査やレントゲン検査)を実施し引き続き対面診察を行います。
⑧COVID-19の治療は自覚症状(発熱、咽頭痛、咳など)への対症療法(解熱剤、抗炎症薬、鎮咳剤など)が基本です。ただ、重症化リスク(65歳以上、高血圧・糖尿病などの持病、肥満、喫煙、免疫抑制状態)が高いと医師が判断した場合にはモルヌピラビル(ラゲブリオ®)などの抗ウイルス薬が適応になります。ラゲブリオは新薬であり、患者さんの同意も必要ですので同意書にサインする必要があります。
⑨COVID-19と診断された患者さんは症状発現から10日間の自宅療養が義務付けられています。一方、我々医療機関は陽性患者さん毎に発症状況や患者情報を保健所に届け出る『HER-SYS』を一人一人入力しなければいけません(これがとても面倒で大変なのです!!)
⑩医療機関がHER-SYSに入力すると、保健所から後日、患者さんへ電話連絡が行き、自宅療養終了予定日や療養方法などの指導が入りますが、感染者数が増加すると電話連絡まで数日の時間を要していました。そこで、札幌市では新たに療養判定サイト(https://www.city.sapporo.jp/hokenjo/youseisha.html)が作られ、患者さんご自身がこのサイトに入力することで、速やかに療養終了日が分かるようになりました(下図参照)
⑪陽性となった場合、できるだけ自家用車や徒歩などで帰宅をお願いしていますが、どうしても公共交通機関を理由せざる得ない場合は、他の感染を拡げないためN95マスクを無償で配布しています。
⑫診察料金は医師が必要と判断した場合のコロナウイルスの検査(抗原検査、PCR)の費用は無料ですが、別途初診料やトリアージ加算(防護服やマスク、感染対策にかかる費用に算定される加算)などは自己負担金が発生します。当院ではできるだけ接触を避けるため、ネット決済としています。お知らせ頂いたメールアドレスへネット決済に必要なURLをお送りし、カード決済画面で決済して頂きます。
ここまで対応してやっとお一人の発熱診療が終了します。これを10名程度、発熱外来の診察時間内(当院ではお昼の1時間)で全てこなさなければいけません。
どれだけのスタッフの気力・労力が割かれているかお分かりになったかと思います。1日で診察可能な人数がどうしても制限されるのもご理解頂けると思います。
しかもひどいことに、これだけ発熱外来の診療が困難を極める中で、PCR検査や抗原検査に対する診療報酬は今年4月から昨年のほぼ半額以下に下げられています!!(下図は案になっていますが、既に実施されました)。世の中は物価高で大変ですが、診療報酬は逆に下げられてしまいコロナの検査をやればやるほど、経営的には大変になってしまう。これではどこも好き好んで発熱外来をやらなくなるわけです。
今、まさにコロナの第7波と考えられる感染爆発が各地で起きています。感染拡大が札幌に来るのも時間の問題でしょう。私達も、他の発熱外来を担う医療機関も使命感だけで2年前からずっと発熱外来をやり続けています。どうか、そのような頑張っている医療機関に、ネットで一方的にいわれのない誹謗中傷をするのは止めて下さい。発熱外来を今でも頑張っている医療機関はどこも、診療報酬が削られても、どんなに日常診療が忙しくても、自分達のお昼休みや帰宅の時間を削って精一杯、発熱患者さんを診療しています。
コロナはもう特殊な感染症ではなく、どこでも誰でも感染し得るありふれた病気です。もし、あなた自身が発熱したらどうしますか?受診できる医療機関を守るためにもどうか発熱外来へのご理解・ご協力をよろしくお願いします。