ブログDIRECTOR'S BLOG

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2022年度 日本心不全学会に参加してきました

10月21日(金)から23日(日)まで3日間、奈良で第26回日本心不全学会学術集会が開催され、当院からは私と、心不全療養指導士である看護師2名が参加してきました。

奈良は気温が18度くらいの秋晴れで、大変すがすがしい空気でした。古都ならではの趣のある建物が多く、そして今回初めて訪れましたが、奈良のコンベンションセンターも新しく素晴らしい景観とともに蔦屋が併設されていたり、オープンスペースがあったりと大変おしゃれな施設でした。

 

ここ最近はコロナの影響でオンラインでの参加ばかりで、現地への参加は久しぶりでしたが、やっぱり対面で得られる情報量や人間関係、何よりその人の熱気や情に触れることができて大変有意義だと感じました。もしかすると、どこにも観光に行かずにこんなに学会に真面目に参加したのは大学院時代を含めても初めてかもしれません🤩それだけ、どのセッションも聞きごたえがあって、勉強になるものばかりでした。特に、今回の目玉は学会では初の試みである公開型の多職種カンファレンス、「これが私達のカンファレンス」でした。普段、それぞれの施設で当たり前のように多職種カンファですが、実際に他の施設がどのようにやっているのか、どんな意見交換の上で診療方針や患者さんの意思決定支援がなされているか、垣間見ることができて、とても興味深かったです。特設会場で行われましたが立ち見がでるほどの盛況ぶりでした。

私は全国の循環器内科を専門としたクリニックからなる組織、Japan Clinic Cardiology Network (JCCN)の会員になっているのですが、最終日にJCCNが主催するセッションで『減薬』について講演させて頂きました。6種類以上の薬剤を服用することを『ポリファーマシー』と呼ばれていますが、心不全では10種類以上の薬を服用することも多いのが現状で、最近では10種類以上の服薬がある人ほど、心不全以外の原因による入院や重篤なイベントに関連することが報告されています(Minamisawa M et al. Circ Heart Fail 14: e008293, 2021.)。心不全患者さんの高齢化で糖尿病や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの心臓以外の合併症を持つ方が増えているので、その分、薬が増えるのは致し方ないかもしれませんが、一方で漫然と10種類以上の薬を服用している例もあります。当然、高齢者では薬を代謝(分解)する力が低下しているため、薬自体の副作用が強く出やすかったり、薬同士の相互作用によって効果が増強・減弱することがありますので、薬はあくまで病気に対して必要最小限の種類と量にとどめる必要があります。そのためには、できるだけかかりつけ薬局をもってもらい、薬剤師さんにもよく相談にのってもらい、協働して服薬調整する必要があるという議論になりました。

その他にゆみのハートクリニックが積極的にやられている重症心不全の在宅診療や、心臓病患者さんの就労支援への取り組みなどが聴講していて大変興味深かったです。

特に、心臓病患者さんへの就労支援については極めて重要なテーマだと考えています。心臓病は他の神経疾患や整形外科疾患などに比べて、一見して病気が分かりずらいため、就労に関して職場や周囲の理解を得られなかったり、どこまで勤務をさせて良いのか事業者も困っていることもよくあります。実際に、一般社団法人 全国心臓病の子どもを守る会のアンケートデータによると、心臓病者の年離職率は40%弱と極めて高いことが報告されています。心臓病は入院して治療すればそれで完治するというものではなく、上手く付き合いながら、社会や生活の場に戻ることが重要であり、その中で就労、働くということは大事なファクターです。

まさしくその点を課題だと感じられ、心臓病を持つ患者さんが容易に就労に関する悩みを共有し、情報を共有するための就労メディアである「はとらく」をコルクレド株式会社(心臓領域) 代表取締役の秋山様が立ち上げられました。

ライターの方は心臓病の当事者と循環器系の医療従事者で、監修には先天性心疾患を抱える循環器内科の医師が行っています。ご自身の体験談から心臓病患者の就労への障壁がよく分かる内容になっていますので、こちらのURLからぜひ見てみて下さい。
3日間の学会が終わって、今は帰路についています。
今回、学会で得た知識や刺激を活力にして、また、明日からの診療に生かしたいと思います。