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北海道大学での研究がプレスリリースされました

筋肉からホルモンが産生される?

骨格筋(筋肉)は体重の約40%を占める、体内の最大の臓器です。これまで筋肉は運動や体を支える運動器官と考えられていました。しかし近年、筋肉からホルモン様の生理活性物質が分泌され、血液の流れにのって脳や心臓など他の臓器で効果を発揮する内分泌器官であることが明らかになっており、この筋肉から出るホルモン様物質を“マイオカイン”と総称します。このことは、つい先日NHKスペシャル “脂肪と筋肉が命を守る”でも取り上げられていました。北海道大学循環病態内科学の私達の研究グループは、以前から心不全や糖尿病を模擬した実験動物を使い、骨格筋に注目してその秘めたる役割を明らかにしてきました(Fukushima A, et al. Am J Physiol Endocrinol Metab.2014)。今回さらに私達はマイオカインの一つである“脳由来神経栄養因子 (BDNF)”に着目し、心不全モデル動物の骨格筋でBDNFの発現が低下し、BDNFを外から投与すると骨格筋ミトコンドリア機能が改善することを見出しました (Matsumoto J, Takada S, Fukushima A, et al. Circulation. 2018;138:2064-2066.)。元々、BDNFは脳の記憶を司る海馬において発見され、神経の発達や再生を促すことが知られています。実際、うつ病や認知症ではBDNFの発現は低下します。つまり、この研究は脳と骨格筋とがBDNFによってお互いに制御し合うこと(脳-骨格筋連関)を示唆し、運動によって骨格筋からのBDNFを増やすことは、脳機能(認知機能・学習・うつなどの精神疾患)が改善するという科学的証拠の一端を見出したことで大変注目されています。当クリニックにおいても、積極的に心肺運動負荷検査を行い、個人の運動能力や骨格筋機能を客観的に評価し、骨格筋の秘めたる健康増進パワーを最大限引き出すようサポートします。もし、本研究にご興味のある方は北海道大学 プレスリリースをぜひチェックしてみて下さいね。

BDNFの概念図

Circulation. 2018;138:2064-2066./ 北海道大学プレスリリース「心不全による運動能力低下の治療法を開発」から引用