9月14日と10月26日にテレビ北海道(Tvh)の『5時ナビ』で発熱外来のコロナ全数把握の簡略化に関する取材を受け、放映されました。
これまで、新型コロナウイルス感染者はHERSYSと呼ばれる国のデータシステムに医療機関から全例入力、報告しなくてはいけない義務がありました。実際にこの入力作業だけで、診療後に1時間以上かかっていました。しかし、9月にこの入力義務が簡略化され、現在は重症化リスクの高い患者さん(65歳以上の高齢者、妊婦さん、透析患者さん、入院や抗ウイルス薬の投与が必要な重症な患者さん)だけが発生届の対象に限定されました。その結果、医療現場の事務作業の負担は各段に軽減しましたが、一方で軽症患者さんに対する保健所のサポートが手薄になる可能性があり、ぜひ、そこも勘案した仕組みが重要であると9月の取材では申し上げました(9月放映の動画はこちら→https://youtu.be/HYeB7OriTck)
幸い札幌市では他の自治体よりいち早く、自宅療養患者さんへの健康観察アプリ「こびまる」を運用されていましたので、自宅療養者へのサポート体制は比較的維持されています。ただコロナ全数把握の簡略化により事務的負担は減りましたが、いまだに発熱外来の診療上の負担はあまり変わっていません。
実際に、第7波の感染がやや落ち着いた9月-10月でも、3割~半数くらいの陽性率で経過しており、当日の午前1-2時間で10名の発熱外来の枠は予約でほぼ埋まっています。また、発熱を呈する疾患は決してコロナだけではなく、インフルエンザや扁桃炎、尿路感染症など、逆にコロナの陰性が確認されてから、鑑別すべき疾患を迅速検査や追加検査で可能性を否定する必要がありますので、むしろ診療上は時間がかかります。もはや、コロナは発熱や風邪症状を有する場合にインフルエンザと同様に想定しなければいけない、ありふれた感染症(common disease)の一つになっています。今秋冬で発熱を含む風邪症状が有る場合は、コロナ、インフルエンザの事前検査をまず行い、それらが否定された上で診察する必要があります。しかし、それだけありふれた感染症であるにも関わらず、いまだにコロナの抗原検査やPCR検査を行う発熱外来の実施機関が圧倒的に不足しており、そのために一部の発熱外来に受診患者の集中が起こっているのが実情です。
政府は、コロナとインフルエンザの同時流行が生じた場合は、自宅でコロナ抗原検査キットを使って自主検査し、陽性であった場合はそのまま自宅療養を継続、陰性であった場合はインフルエンザの可能性を疑いオンライン診療を受けるよう推奨しています。しかし、インフルエンザと一般的な風邪とをオンライン診療で区別するのは困難であり、しかもインフルエンザであった場合は発熱から48時間以内でなければ抗ウイルス薬の有効性が乏しく、それまでに診断するのはさらにハードルが上がることから、現実的な仕組みとは思えません。一方で、コロナかインフルエンザか判断がつかず、発熱外来をそのまま受診すれば第7波と同様に受診難民が増えるだけになってしまいます。10月の取材ではそのような問題点を述べました(10月放映の動画はこちら→https://youtu.be/5lphSbTuqt4)
ここ最近はじわじわとコロナの陽性率が増えている中で、第7波を超えるような感染拡大が起きた場合に私達はどう対処すればよいのか。発熱外来を担う医療施設が増えることを願いつつ、今は通常診療や発熱外来に加えて、インフルエンザワクチン、オミクロン対応コロナワクチンの接種を粛々と進めています。