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今年度のインフルエンザワクチンはどうするべきか?

今年は新型コロナウイルス感染症に振り回され、現在までコロナワクチンの個別接種で忙しい毎日ですが、いよいよ10月中旬を過ぎて今度はインフルエンザ予防接種の時期になりました。

当院では例年通り、10月1日から主に心疾患や呼吸器疾患などの基礎疾患を有する患者さんや65歳以上の患者さんへインフルエンザワクチンの接種を推奨をしています。しかし、患者さんからは「昨年は接種したけれど全然流行しなかった。感染対策もずっとしているし、今年のインフルワクチンは必要ないと思う」「どうせ今年も流行しないだろうけど、インフルワクチンの接種はどうすれば良いですか?」といった声も多く聞かれます。今年は打つべきか迷っている方も多いのではないでしょうか。

ではなぜ昨年はインフルエンザが流行しなかったのでしょうか?

日本感染症学会の見解では新型コロナ対策として手指衛生やマスク着用、3密回避、国際的な人の移動の制限などが行われたことが、「インフルエンザの感染予防についても効果的」であったことと、インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスの間に、あるウイルスが流行すると別のウイルスが流行しない「ウイルス干渉」が起こった可能性をあげています。

では、2021-2022年シーズンのインフルエンザの流行予測はどうかとういうと、先に冬季を迎えた南半球のオーストラリアにおいて昨年と同様に極めて少数であったことから、今冬の北半球でも流行は限定的と予想されます。しかし、同じ北半球のアジア亜熱帯地域(バンクラディッシュやインド)では夏季にインフルエンザが流行したことから、同じような小流行を繰り返すことでこれらの地域でウイルスが保存され、コロナの収束により国境を越えた人の移動が再開されれば、海外からウイルスが持ち込まれインフルエンザの大きな流行を起こす懸念があります。さらに、昨シーズンにインフルエンザにかかった人が極めて少数だったため、社会全体の集団免疫ができていないと考えられています。実際に昨年は世界の複数の地域で子供がかかる『RSウイルス感染症』が極端に少なかったのに、今年の夏は感染者が急増し小児病棟が逼迫しました。つまり、RSウイルスと同様にインフルエンザも昨年少ないために自然免疫を持ってる人が少なく、それが免疫力の低い高齢者や長期入院患者さんに流行すると重症化するリスクが増える可能性があります。これらを鑑みて、英国政府では例年の1.5倍の流行の可能性があるとしてインフルエンザワクチン接種を強く呼びかけています。日本感染症学会からも最新の提言では「本年度のインフルエンザワクチンの積極的な接種を推奨する」としています。

また、最新の研究報告ではインフルエンザワクチン接種率が高い地域では新型コロナウイルスによる死亡率が低いことや、ICU(集中治療室)に入るほど重症化するリスクが低下することが報告されています(Taghioff SM, et al. Examining the potential benefits of the influenza vaccine against SARS-CoV-2: A retrospective cohort analysis of 74,754 patients. PloS one 16: e0255541, 2021.)

もちろんインフルエンザワクチンはあくまでインフルエンザに特異的に有効なワクチンですが、ワクチン接種により非特異性免疫が全体的に活性化され、新型コロナウイルス感染症への免疫力も高めた可能性があると推察されますが、これにはまだまだ今後の検証が必要です。

いずれにしても、今秋冬シーズンには新型コロナの第6波がおそらく再拡大することが予想されることから、ワクチンで予防できる疾患についてはできるだけ速やかに接種を行い、医療機関への受診を抑制して医療現場の負担を軽減することも重要と思われます。わが国では、新型コロナワクチンとその他のワクチンとは、互いに片方のワクチンを受けてから2週間以上の間隔をあけて接種することが必要です。新型コロナワクチンをまだ接種していない人には、まずそちらを優先せざるを得ませんが、並行してインフルエンザワクチンの接種もご検討下さい。

また、高齢者やリスク因子を有する人は、インフルエンザ罹患後に合併する細菌性肺炎の予防も重要です。これらの方には、肺炎球菌ワクチンの接種も奨められますので、特に65歳以上で肺炎球菌の定期接種のご案内が手元に届いている方は、当院スタッフへお声がけください。

コロナのワクチンと治療薬がいきわたるまで、今、我々ができる最大の備えが予防接種であることは間違いありませんし、国境が開けばインフルエンザが流行する可能性も十分にありますので、免疫を高めるためにも今年も例年通りインフルエンザワクチンは接種しましょう。

『備えあれば憂いなし』 今年の秋冬も十分に備えて、平穏無事に過ごしたいものです😊