今日、テレビを見ていると「たけしの家庭の医学」で興味深い特集がされていました。
テーマは「心臓を老けさせない4つの新事実」
ちょうどその番組で当院でも測定可能な『心臓年齢』について取り上げられていたので、少し説明したいと思います。
心疾患は癌につづいて死因の第2位です。高齢化が進む日本では心疾患の終末像である心不全の患者数が爆発的に増加しており、将来は130万人を超えると予想されています。癌の進行度は画像検査や腫瘍マーカー等で判定し、胃がん・大腸がん検診などで早期発見・治療が重要であることはよく知られていますが、心疾患の寿命はどのように決まるのでしょうか?
実は心不全を含む心疾患の寿命は必ずしも心臓の機能と相関しません。ポンプとしての心臓の機能が悪くても寿命が長い人がいますし、逆に見かけ上は良くても寿命が短い人がいます。心機能よりむしろ全身持久力の指標である「最大酸素摂取量」の方が、寿命と強く関連します(図参照)。最大酸素摂取量とは、「1分間に体内に取り込まれる酸素の最大量」であり、その消費量が多いほどたくさんのエネルギーが作り出す能力が高く身体を長く動かすことができます。最大酸素摂取量は心臓のポンプ機能や血液運搬、骨格筋、肺拡散能力などが関連するため、いわば全身臓器の総合的な能力ともいえます。
この最大酸素摂取量は健康な人でも心疾患患者でも高い方が寿命が長く、加齢とともに低下することから「最大酸素摂取量」=「心臓年齢」と考えられています。この最大酸素摂取量(つまり心臓年齢)を正確に測定するには呼気ガス分析機能付き心肺運動負荷検査装置が必要であり、実際に番組でもこの方法で測定していました。
当院は道内のクリニックで初となる呼気ガス分析機能付き心肺運動負荷検査装置を設置しておりますので、「心臓年齢」を測定できます(図参照)。ご興味のある方はいつでもご相談下さい。
ところで、番組ではプロテニスプレーヤーより岩手県の一般住民の方が、心臓年齢が低い(若い)ことが驚きでした。心臓年齢は上述の通り、全身臓器の総合力ですので一概にどの臓器の影響が強いとは言えませんが、その一つの理由として鉄分摂取量の多さが挙げられていました。岩手県では南部鉄器を家庭でよく使用するため、鉄器から染み出した鉄分を多く摂取し、結果的に鉄欠乏性貧血が少なく、ミトコンドリア機能への好影響が期待できるようです。貧血、つまり酸素濃度の薄い血液を全身臓器に供給するにはポンプとして多量の血液を全身に送らなければならず、心臓に負担がかかるのは容易に想像がつきます。心腎貧血連関として知られる心疾患と貧血の悪循環は、当然全身持久力(=心臓年齢)に影響を及ぼすため、なるほど納得がいく考察でした。一方、鉄分が心筋ミトコンドリア機能に非常に重要であることは徐々に明らかになっており、今まさにアメリカに留学中の優秀な後輩がまもなく論文に発表されますので、また今度ご紹介します。
いずれにしても、「栄養と運動」は心臓年齢を若く保つ秘訣であり、一見分かっているようでまだまだ新しい発見がありそうです。