新型コロナウイルス感染症のワクチン開発が待たれています。製薬会社はこぞってワクチン開発を進めており、早ければ今夏には臨床試験を開始し順調に進めば、来年秋には臨床試験が終了する予定ですが、一般に流通するにはさらに時間がかかりそうです。
一方で、今年の秋・冬を考えると新型コロナウイルス感染症に加えて、季節性インフルエンザの流行は当然予想され、さらに細菌による肺炎、一般的なウイルス性上気道炎(いわゆる風邪)が混在するため、一体どれにかかっているのか、例年より判断が難しくなる状況が容易に予想されます。
今、私達ができる対策は何でしょうか?
その一つは既存の病気に対するワクチンの接種、つまりインフルエンザワクチンと肺炎の原因となる肺炎球菌ワクチンです。インフルエンザは例年10月以降に流行が予想されるウイルスを標的としたワクチンが全国に流通され、5ヵ月程度しか効果が持続しませんのでまだ接種はできませんが、肺炎球菌ワクチンはいつでも接種することができます。
実際に、世界保健機関(WHO)は肺炎球菌ワクチンは新型コロナウイルスには効果はないが、肺炎など呼吸器疾患予防のために接種を強く推奨しています。また、最近のメタ解析では7-12%の入院中のコロナウイルス患者で細菌感染の合併があったと報告しており、コロナウイルス感染症により細菌への免疫能が低下することが示唆されます(Lansbury L, et al. Co-infections in people with COVID-19: a systematic review and meta-analysis. J Infect 2020)。
肺炎の原因菌のトップは肺炎球菌であり日本人の約3~5%の高齢者で鼻や喉の奥に常在していることから、65歳以上の高齢者、あるいは65歳未満でも慢性の心疾患、肺疾患、肝・腎疾患、糖尿病などの免疫力が低下した患者さんでは接種することが望ましいと考えられます。
さて、この肺炎球菌にも多くの種類(型)がありますが、その中の複数の型に有効な2種類の肺炎球菌ワクチンが現在接種することができます。
①ニューモバックスNP(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン): 様々な肺炎球菌の型のうち、23種類の血清型に効果があり、これだけで6割程度の細菌による肺炎の抑制が期待できます。2020年度に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳になられる方は、1回だけ公費によって料金が免除され、一律4,400円で接種することができます。接種後5年間有効です。詳細は札幌市ホームページの肺炎球菌ワクチンのお知らせを参照下さい。もし上記以外のご年齢で接種希望の方は任意接種(自由診療)となります。当院では6,600円 (税込み)です。
②プレベナー13 (13価肺炎球菌結合型ワクチン): 13種の血清型に対応しており、肺炎による入院リスクを73%減少させることが報告されています。ニューモバックスと異なり、プレベナーは一度接種すれば生涯、免疫記憶がつくため1回の接種で構いません。公費では負担されず接種は年齢にかかわらず任意接種(自費診療)となり、当院では11,000円(税込み)となります。※プレベナー13はつい先日、年齢を問わず肺炎球菌による疾患に罹患するリスクが高いと考えられる患者さんの肺炎予防に適応が追加されています。
なお、上記2種類の肺炎球菌ワクチンは併用することでより高い肺炎予防効果が得られます。接種方法は下記の図のようになりますが、簡単に言うと
1.「ニューモバックス」をすでに接種されている方の場合、1年以上あけて、「プレベナー13」を接種
2.「ニューモバックス」を接種されていない方の場合、「プレベナー13」を接種後、6か月~4年以内に「ニューモバックス」を接種
今年の秋・冬の感染症シーズンに向けて、ぜひ今から万全な準備を整えましょう。