ブログDIRECTOR'S BLOG

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発熱患者への対応をめぐる現場の混乱

いよいよ秋冬の到来で最近はずいぶん冷え込んできましたね。寒くなると風邪やインフルエンザが流行します。そして、今年は新型コロナウイルス感染症のさらなる増加も予想されています。もともとコロナウイルスは風邪の原因ウイルスの一つですから、冬に増えるのは容易に想像ができるかと思いますし、事実日本より北方にあり本格的な秋冬を迎えているヨーロッパでは再流行が起こっています。これまで、37.5度の発熱が数日以上持続する、あるいは息苦しさ、倦怠感、味覚・嗅覚異常などの風邪症状が持続すれば帰国者・接触者センター(つまり保健所)にまずお電話頂いてから、新型コロナかどうか判断され、疑わしければ帰国者・接触者外来という専門の外来を担う病院へ振り分けられ、それ以外は我々のような一般の医療機関への受診を促されていました。しかし、10月から段階的に発熱時は身近なかかりつけ医にまずはお電話で相談するよう厚労省が方針を転換しました。これは実際は現場にかなりの混乱を招いています。

皆さんもご存知の通り、新型コロナウイルス感染症はもともとコロナウイルスという風邪(正確には急性上気道炎)の原因ウイルスの1つですから、同じような上気道炎症状(発熱、鼻水、咽頭痛、咳、痰など)を呈する単なる風邪やインフルエンザ感染症と症状だけでは全く区別がつきません。もちろん発熱期間が長いとか、症状が出るまで時間がかかるとか(潜伏期間が長い)、嗅覚・味覚異常が他のウイルスより表れやすいとか、特徴的なサインは幾つか報告されていますが、それでも症状だけで診断するのは困難ですそうなるとある程度検査を頼りにするしかありません。検査には鼻咽頭ぬぐい液(鼻に綿棒をぐりぐりして採取する検体)あるいは唾液によるPCR検査か、あるいは鼻咽頭ぬぐい液による抗原検査がありますが、唾液以外は検体採取時にエアロゾルの発生により医療者へ感染するリスクがあることや、特にPCR検査の場合は検査機器が大型で高価であり自前で持ってるクリニックはほとんどなく、基本的には民間機関へ依頼することがほとんどです。PCR検査には検体を輸送するための梱包作業が発生し、結果が出るまで数日のタイムラグがあることや、そもそも検査する体制を作るには発熱以外の患者さんと動線(診察室や待機場所)を分ける必要があり、スペースの限られているクリニックではなかなか一筋縄では行かないのが現状です。新型コロナウイルス感染症は、検査で陽性と出れば原則的には設備が整えられている入院施設で管理することが求められている指定感染症ですから、陽性に出たらその患者さんをどのように搬送し入院させる(あるいはホテルや自宅で待機させる)のか明確でない現状では検査だけ行うクリニックでは対応に苦慮し、さらに昨今の風評被害も相まってまるで検査を実施するのは陽性と出て欲しくないロシアンルーレットをやるようなものです。

このような背景があり、初めから「発熱患者はお断り」とする医療機関やクリニックも多いと聞いています。とはいえ患者さん側から考えると、今まで毎月血圧やコレステロールでかかってるかかりつけ医があるのに、37度台の微熱が出ただけで診てくれないかもしれないという不便さや不安があるのはよく分かりますし、一方で医療者側がそうするのには上述のような背景があり、「ちょっとした微熱や風邪症状」でも「新型コロナウイルス感染症かもしれない」という可能性が必ず想定されるため、なかなか容易に引き受けられないというわけです。ただ、このような状況は医療機関だけでなく、ホテルや飲食店、美容室などサービス業はどこも同じ悩みだろうと思います。

そうした中、今、私達ができることは手洗いやアルコール消毒、マスクやアイシールドの着用、アクリル板の設置、発熱患者さんの待合室の分離などの最大限の感染防御策を講じながら、心臓や胃腸疾患でお困りの患者さんに幅広く対応すること。そしてその患者さんが微熱や咳、咽頭痛などの風邪症状にかかっても引き続き対応できる体制を作ることだと思います。

当院では院外スペースにパーティエーションを設置して発熱患者さん専用の臨時待合室を設置しています。ここでまず鼻咽頭ぬぐい液による抗原検査(約15分で結果が出ます)によりスクリーニングしています。

 

このような体制を今後も維持するためには、クリニックだけでなく受診される皆さんにもご協力頂かなければなりません。当院にかかりつけの患者さんは十分なデータがありますのである程度臨機応変に対応できますが、それでももし、発熱などの風邪症状が出た時には必ず受診前に当院へお電話下さい。

一方、一度も当院を受診したことがない患者さんで、風邪症状で受診される患者さんはどうかまずは#7119 または 011-272-7119の救急安心センターさっぽろにお電話頂き、症状から新型コロナウイル感染症の疑いが強くないかどうかお尋ね下さい(尚、疑いが強い場合は直接帰国者・接触者外来への受診を勧告されます)。

その上で疑いが強くないと判断され、かつ当院を受診される場合では、必ず事前に当院へ受診が可能かどうかお電話下さい (011-374-7667)。

当院では他の通院患者さんと診療時間を分けるため、月~土曜日 12:00から13:00まで (受付時間 11:45~12:45)の時間帯に限って、発熱・風邪症状の患者さんの診療を受け付けております。それ以外の時間帯に来院される場合は、検査も診療も十分できませんので診療自体をお断りさせて頂くことがあります。どうかご了承ください。

時に、「ここではコロナ患者さんの診療をしているのですね、こわいですね」という言葉を投げかける患者さんがいらっしゃいます。今のシステムでは当院にかかったことがない風邪症状がある患者さんはまず#7119で疑いが強いかどうかを症状や状況から判別され、疑いが強い患者さんは直接帰国者・接触者外来へ誘導されますのでそもそも除外されています。つまり、当院を受診されるのは「疑いが低い患者さん」が前提です。それでももちろん可能性はゼロではありませんし、それは医療機関以外であっても、同じことが言えます。

医師という仕事に就いた以上、誰しもが困っている患者さんを見過ごせません。しかし、実際の診療は医師だけでなく看護師や検査技師、事務などのスタッフの理解が得られなければ行うことができません。当院のスタッフは私の考えを本当によく理解してくれ、全面的に協力してくれています。どうか、そのような医療者の努力をご理解のほど何卒よろしくお願い申し上げます。