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コロナワクチンのよもやま話

札幌市では65歳以上の高齢者に対する新型コロナウイルスワクチンの接種券配布が終了し、基礎疾患を有する16歳から64歳の優先接種の事前登録が6月17日から始まり、明日(6月30日)から随時配布が開始される予定です。基礎疾患というと重症な疾患を思い浮かべがちですが、実際は高血圧や肥満 (BMI 30以上)、睡眠時無呼吸症候群も含まれますので、当院通院中の患者さんはほとんどの人が該当すると考えてください。ぜひ該当される方はお早めに札幌市ホームページからのご登録をお願いします。

当院通院中の患者様は75歳以上の高齢者については計2回のワクチン接種(ファイザー社製)をほぼ100%の接種率で完了しています(合計760回 ❢)。さらに、先週日曜日には65歳~74歳の患者さん400名以上に接種し、これで65歳以上の患者さんはほぼ100%の接種率で1回以上のワクチン接種を完了しています。総接種回数はなんと1000回を超えました😆さらにさらに、当院は明日から一部の連携企業に『職域接種』を実施する予定です(既に連携企業の受付は終了していますので新規受付はお控え下さい)

当院はかかりつけ患者さんのみに実施する『ワクチン接種実施医療機関』ですが、特に65歳以上の高齢者に対しては日曜日を返上してまでもできるだけ早く、かつ全員へ接種を進めて参りました。それには理由があります。下記の図で示すように、30歳代と比較して65歳以上の高齢者は実に25倍、80歳以上だと70倍まで重症化する危険性が高いからです。

 

さらに、65歳以上の高齢者は高血圧や糖尿病など持病を持つ方が多くいらっしゃいます。持病があるということは必然的に病院へ通院しなければならず、誰しもが混みあったクリニックの待合室で診察の順番を待たなければいけません。当院にはオンライン診療という代替手段がありますが、利用できる高齢者は決して多くありませんでした。そこで、通院患者さんがほぼ全員ワクチンを打ち免疫を持っていれば、例えその中の一人に感染者が出たとしても、他の人に感染しにくくなることでコロナ感染症が流行しなくなり、間接的に免疫を持たない (ワクチンを打っていない)通院患者さんも感染から守られます。このような状態を集団免疫とといい厚生労働省が推進しています。社会全体にこれが浸透するのは総人口のうちかなりの接種率が達成されなければ難しいと予想されますが、少なくとも当院における限られた患者数では達成は十分可能であり、クリニックを感染症から守る唯一無二の方法と考えられます。

上述した通り明日(6月30日)からは、基礎疾患を有する患者さんへの接種券配布が開始され、さらには7月13日からは一般の16歳以上64歳以下への患者さんへ接種券が配布されます。これに先立ち、当院では明日(6月30日)から、かかりつけ患者さんに限定してインターネットでのコロナワクチン予約を開始しました。接種券がお手元に届き当院での接種をご希望される方は当院ホームページにあるバナー「インターネット予約受付」からコロナウイルスワクチンの予約サイトでご予約下さい。毎週木曜(終日)、金曜(終日)、土曜日(午前のみ)で予約を受け付けております。数に限りがございますのでお早めにご予約下さい。


さて、ここで現在日本で使用できる新型コロナウイルスワクチンの種類についておさらいしたいと思います(下図参照)。最近、患者さんから「ファイザーだと血栓ができるのでしょ?」だとか、「モデルナは効果が劣るからファイザーを打って欲しい」とか、おそらく情報が混乱しているように思います。

現在、日本においてクリニックや集団接種で使用されているワクチンはファイザー製のワクチン(コミナティ)です。3週間間隔で2回の接種が必要です。発症予防効果はなんと95%❢ 気になる副反応としては打った場所の痛みや頭痛、女性に多いですが発熱。アナフィラキシーは100万回のうち4.7回と極めて稀で当院でも1000回以上の接種でまだ一度も経験していません。一方、職域接種はモデルナ製のみ使用され、4週間間隔で2回の接種(ファイザーより1週間長い)が必要です。発症予防はこちらもなんと94% (ほとんどファイザーと変わりませんね)❢ アナフィラキシーの頻度は100万回のうち2.8回とほんのわずかだけファイザーより低率です。アストラゼネカのワクチンは現在までのところ日本では使用経験がありません。発症予防効果は76%とちょっと他の2製品より低く、50歳未満の女性でごくまれに血栓症の副反応が報告されています。

いずれのワクチンも臨床試験で使用された方法で有効性が証明されているため、1回目がファイザーの場合、必ず2回目もファイザーを接種します。ところが最近、アストラゼネカ製ワクチンのみ2回打つよりアストラゼネカ製ワクチンとファイザー製ワクチンの異なるワクチン接種の組み合わせでより高い免疫獲得効果があるという研究結果が出ました( Lancet 397: 2043-2046, 2021.)私は留学先であるカナダのラジオを時折聴いているのですが、カナダではアストラゼネカのワクチンを1回目に接種した人では積極的に2回目の接種をファイザーかモデルナに変更するかどうか検討しているようです。

今回のワクチンは今までのワクチンとは作用する仕組みが全く異なります。これまで日本で使用されていたワクチンはウイルスの一部のタンパク質を人体に投与し、それに対して免疫が出来る仕組みでした。しかし、今回のファイザーやモデルナのメッセンジャーRNA (mRNA)ワクチンでは、mRNAというタンパク質をつくるもとになる遺伝子情報の一部を脂質で囲み保護しながら注射します。体内ではその遺伝子情報をもとに、ウイルスの表面にあるトゲ(スパイク)の部分のみ作成し、それをヒトの免疫細胞が認識してトゲに対する抗体を作ります。こうすることで、本物のウイルスが入ってきたときに、ウイルス表面にあるトゲを抗体がブロックし、ウイルスがヒトの細胞に感染できなくするのです。

コロナワクチンが新型コロナの発症を予防する効果は95%以上と明確でありますが、さらに最近は複数の研究からウイルスの感染そのものを防ぐ効果が報告されています。つまり、接種者がその周りの人に感染を広げる可能性が低くなるということであり、ご自身がワクチン接種すれば自分の家族や周りの人を感染から守ることになります。最近、国内では変異株の出現が報道されワクチンの効果が減弱するのではないかと懸念の声がありましたが、実際にファイザー接種後6ヶ月の解析結果では、変異株が大多数を占める南アフリカにおいても100%の予防効果を示したことが報告されています。ワクチンの効果の持続性については、6ヶ月後までの期間において発症予防効果91.3%と高い有効性が確認されており、CDCが定義する重症化を100%予防したように重症化予防効果も維持されています。一部の報道ではことさらワクチンの副反応を強調したり、科学的に証明された有効性を捻じ曲げて解釈している人(時に医療者も)いらっしゃいますが、その方々はだいたい感染症分野の素人であることがほとんどですので注意が必要です。今回ご紹介した内容は全て、日本および世界の感染症専門家が出された見解であり厚労省が国を挙げて推進している事業です。厚労省のページもご参照下さい

今後ワクチン接種が広がることによって、重症者が減ることが期待されます。また、実際にワクチン接種が進む東京では2021年3月ごろに新規感染者の20%以上を占めていた65歳以上の割合が、6%台と減少傾向になっています。

現在、国内では新型コロナウイルス感染の第4波がようやく収束に向かいつつあります。しかし、昨年の第2波や第3波がちょうど4-5月と10-11月にピークを迎えたように、今後再び広がるであろう第5波は6ヵ月以内(10-11月頃)に流行するでしょう。第4波では札幌市の医療機関は救急患者の受け入れ先が決まらないなど、極めて深刻な医療提供体制のひっ迫が生じました。

医療機関の負担を減らすためにも、家族や友人など自分の周囲の大事な人を感染から守るためにも、再び感染拡大する前にぜひ前向きにワクチン接種をご検討ください❢